曼荼羅茶会について

●御礼

この度は、曼荼羅茶会に御参加頂き、ありがとうございました。

このページでは、当日の時間の都合で語り切れなかった本会の趣旨や献立と、栄西、喫茶養生記についてお話いたします。

今後の皆様の一助となりましたら幸いです。

また、SOTO茶会では様々な茶会や講座を開催しております。茶の湯の要素や形式をよりたっぷりと知りたい、という方はぜひぜひご参加ください。

 

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●本会の趣旨

 私の家族は誰もお茶をしておりません。約10年前、大学を休学しておりました私は、ある時、ふと想いまして、ほぼ抹茶を飲んだことがないのに宗家に入門しました。その時、はじめて茶の湯に魅力を知りまして、その2年後、大学を中退し内弟子入門しました。そして内弟子を卒業し「宗道」という号を頂いた後、思うところたくさんありまして独立。現在に至ります。

 

 個人的に始めたため、「お茶」というものに対して、まったく既成概念の無い私からしてみれば、形骸化された団体性というものに兼ねてからの疑問がありました。茶の湯というものは己の精神性や身体性の確立を目指す「修養」であったり、個々人の見えない想いを顕現化する「形式」であったりするのに、ひとつの家的集団性を重んじられるのは、特に現代にとっては、感覚としても理解できないものでありました。侘び寂びの祖 村田珠光は「境をまぎらかす」ことを目的としたのに、茶の世界は「境」ばかりでないかと。

 

 想いのある「人」、「もの」、それらが独立しているからこそ、集合時に起こる予期できぬ化学反応。未知と既知を織り交ぜて生まれる魅力的な空間が茶の湯の醍醐味です。亭主が提示するものが素晴らしいのではなく、それをきっかけとして客人との間に起こる出来事が、とても魅力なのです。これは実は特別なことではなく、普段皆様も大切なご家族やご友人とされていると思います。そのため、これらに「茶の湯」という特別な名称を持たせることも、私にとっては本来不要なものだと思っております。

 

 実はそれを教えて下さったのは、私が若い頃に嫌悪しつつ所属した「団体性」の中心に座す内弟子の頃の師匠でございました。宗家を退職したあとも、お声を掛けて下さり、七十年分のたくさんの資料をもって、ご指導いただきました。自分が時代の遺物だと思い込んでいた根源的なところに私は結果として救われたのです。茶の湯というものに裏切られずに済んだことは、非常に幸せなことに思います。先人たちが残した智慧に触れられることは、身に余る程、偉大でありました。

 

 しかしながら、現代では抹茶が容易に手に入るようになったことで、菓子飲料の調味料的な存在となっていたり、味覚や奇抜さだけに終始した茶会が乱立していたりと、表面的な部分だけをなぞっている展開が多く見られます。

 

 そのため、改めて5000年、800年、400年という区切りを以て、それぞれにどのような変化が起こり、どのようにして我々の身体を導いたのかを、先人たちの智慧を集成し、現代なりの新たな方法を模索しながら、皆様にお届けできればと思ったことが、本会のきっかけでした。

 

 そして、幸運なことにその想いを実現してくださるお二人に出会えました。本会も大変な幸運のもとに成り立っております。ぜひまた皆様と再会して、お茶を飲みたいと思っております。「誰にとっても平等で分かりやすく」がテーマであります。

 

 引き続き、宜しくお願い致します。

 

 

 武井宗道

 

 

 

 


●栄西について

 栄西は、鎌倉時代に活躍した天台宗のお坊さんです。日本の仏教だけでは飽き足らず、28歳と48歳の2回、中国へ渡っています。

 2回目を終えて帰国する際、臨済禅と、抹茶を持ち帰りました。その抹茶は二日酔いに苦しんでいた三代将軍実朝に処方され、まさに効果覿面でして、日本国へ正式に抹茶が迎え入れられることとなりました。

 

 

●喫茶養生記

 『喫茶養生記』は抹茶の効能や摘み方、作り方などが載った、日本最初の茶について書かれた書物です。栄西は、将軍実朝を抹茶で快復させた際、この一巻を奏上しました。

 当時、禅宗を布教しようとしたことで、他の仏教団体から圧力を受けていた栄西ですので、書の中では禅の事について一切触れられておりません。しかしながら、「苦味を欲する心の臓のために茶を飲むのだ」、という栄西の膨大な知識によって紐づけられた論が見事に展開されています。

 

 

●曼荼羅について

 悟りの世界を表す曼荼羅でございますが、栄西の展開する論を、それぞれの方角や味覚、季節、真言、仏さまなどで表すと、曼荼羅図と同じ組み合わせになります。

 ということは、そもそも曼荼羅について理解していなければ、我々は抹茶を将来した意味を根本から理解することができません。

 日本人の身体を健やかにするために、どんな理由があったのか。ご住職のお話を通して、今後もまた紐解いていきたいと思っております。

 

 

 

 

 


●曼荼羅御膳

 当日は、先述した曼荼羅を基に、「曼荼羅御膳」を五十嵐美雪氏のたくさんの工夫を頂き、作りました。

 

【献立】


甘…糸巻見立てごはん(茶蕎麦、十割蕎麦)〈飯〉

苦…鱧椀  冬瓜、ゴーヤ〈汁〉

鹹…イシガレイ昆布〆

       鰤  銀漢造り 振り酸橘  〈向〉

酸…和ピクルス(白瓜、オクラ、茗荷)  〈香〉

辛…玉子豆富 青唐辛子味噌のせ

 

●菓子

 菓子は、菊家謹製。中国から日本へ渡った抹茶をイメージし、波を表現しています。卓越した技術に裏打ちされた、シンプルな和菓子をご用意いたしました。

 

 

●抹茶

 香炉園詰。お茶会では、常にひきたてのお抹茶をご用意しております。一服分を挽くのに、大変な時間がかかりますが、店主の中村氏の愛情がたっぷり込められた丁寧な抹茶です。

 

 

 

 

 

 

 以上、曼荼羅茶会についてでございました。

 この茶会前にも、今回出てきたアカメガシワは「茶と花」で、『喫茶養生記』は「茶と本」で、別途解説しております。様々な要素を詰め込むのが茶会ですので、要素をより詳しく知りたい方は、ぜひ他の講座にもお気軽にご参加ください。

 

 

 

 長文となりましたが、ここまで御読み頂き、ありがとうございました。

 また、お会いしましょう。

 引き続き、宜しくお願い致します。